- 図工の授業が終わりに近づいた子供たちは、描き終わった絵を片づけ始めた。まだ乾ききったいない水彩絵の具を、早く乾かそうと吹いている子供たちのなかに
と座り込む子供が出てきた。
一体、なにが起きたのだろうか?。呼吸は酸素を取り込むだけではなく、体から二酸化炭素を放出する重要な役割を担っている。たとえば、全速力で走ると息は大きく速くなる。それは酸素摂取と同時にエネルギーを作る過程でできた乳酸を二酸化炭素の形で吐き出すためだ。
人は呼吸を自分の意思で制御できる。フーッ、フーッと吹くとき血液中の二酸化炭素はドンドン少なくなり、脳への血流も減少する。その結果、目がチカチカしたり、頭痛を訴えることになった。息をゆっくりすれば不快な症状は消える。
精神的緊張があると脈だけでなく呼吸も速くなる。速い呼吸が自分の意思で止まらなくなり、どんどん大きく速くなることがある。二酸化炭素は減少し血液のアルカリ分が高まる。こうなると強い症状が出てくる。手指が緊張し動かなくなる。息苦しくなりどうにも身の置き所が無くなる。
これが過換気症候群という状態だ。人間は意識のレベルで過呼吸を制御できない時に、自動制御で過剰な呼吸を抑えるプログラムを持っていない。進化の過程でこうしたシステムへの必要性が少なかったのだろう。精神的ストレスが満ちあふれている現代に過換気症候群が多いのは、自然に適応してきた身体が文明社会に適応していないことに由来するのかもしれない(行岡哲男・東京医科大学教授)
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