呼吸 呼吸には「肺呼吸」と「組織呼吸」の2つがある。
呼吸とは、体内の組織に必要な酸素を体外から取り入れ、体内にできた炭酸ガスを体外に排出すること。
細胞の中で各種の栄養素を燃やしてエネルギーをつくるのは、ミトコンドリアという小器官の働きである。
ミトコンドリアが栄養素を代謝するためには、酸素を必要とする。
また、その代謝で生じる炭酸ガスは、体にとって有害なため、排出しなければならない。この「酸素を取り入れ、炭酸ガスを排出する働き」が呼吸である.
したがって一口に呼吸といっても2種類ある。
『肺呼吸』(外呼吸)
肺胞内の空気と血液とのガス(酸素と二酸化炭素)交換。
まず、肺の中で体外の空気(酸素)と体内の血液中の炭酸ガスを交感する『肺呼吸』(外呼吸)。
肺胞気と静脈血の各ガス分圧の差により、毛細血管にO2を渡し、肺胞中にCO2を取り込む。血液中に取り込まれたO2は赤血球内の血色素(ヘモグロビン)に結合して、各所へ運ばれる。
『組織呼吸』(内呼吸)
組織細胞とその周囲の液体環境との間でのガス交換。
もう1つは、
体内の各臓器や末端の組織(末梢組織)で、毛細血管中の血液と細胞との間で行う『組織呼吸』(内呼吸)である。
動脈血と組織内にガス分圧の差により、組織細胞へO2を渡し、かわりにCO2を受けとる呼吸を内呼吸といい、CO2の大部分(85%)は水と反応して炭酸水素イオン(HCO3ー)として静脈血によって運ばれる。肺では再びCO2の形となり、、呼気としてCO2を吐き出す。
この内外の呼吸を合わせて、酸素や炭酸ガスを中心としたガス循環と流れの過程を総称して呼吸と定義している
(永田晟著「呼吸の奥義」p14~)
ヒトの呼吸は[鼻][口]ー[咽頭]ー[気管]-[気管支]-[肺]という呼吸器官のつながりで行われているが、かんじんのガス交換は肺だけで行われている
ガスは、高濃度に存在する場所から、低濃度に存在する場所へ移動する。
ガスの濃度を
「分圧」という。
ガス分子の移動は両方の部分のガス圧が全く同じになるまで続く。
分圧
(mmHg)O2 CO2 吸気 158mmHg 0.3mmHg 呼気 116mmHg 32mmHg 肺胞気 100mmHg 40mmHg 動脈血 95mmHg 40mmHg 静脈血 40mmHg 46mmHg
呼吸 運動の主役は
横隔膜の収縮(吸息)と弛緩(呼息)が主役。
横隔膜は腱と筋肉でドーム状に作られている。
息を思いっきり吐くと、このドームの頂点は、正面から見てほぼ第4肋骨の高さになる。
息を吸うために筋肉が収縮すると、ドームが下がって胸腔の容積を増やす。
安静時の呼吸では、
横隔膜が下がる幅は15mmぐらいだが、腹式呼吸をすると60mm~70mmにもなり、脊椎を伸ばすことで、実質的には100mm近い下げ幅になる。
呼吸運動とは?
吸息によって外気を肺内に取り込み、
呼息によって肺内のガスを外気中に排出させる運動。
(吸息運動)
- 外肋間筋の収縮と横隔膜の収縮により、胸腔が拡大する
- 胸膜腔内圧がー2~ー4cmH2Oから-6~-7cmH2Oへ、さらに陰圧になる。これによって肺胞内圧が陰圧になり、体外からの空気を吸い込む。
(呼息運動)
- 内外肋間筋の弛緩と横隔膜の弛緩により胸腔が縮小する。
- 肺胞内圧が胸郭により圧迫されて陽圧になり、これによって肺胞気が呼出される。
(副作用で呼吸が異常)
「アモパン」「ダルメート」「ハルシオン」「PL顆粒」「ベンザリン」
肺 肺は左右一対で、左肺は2葉、右肺は3葉に仕切られている。肺は、後ろ上方からの肋骨面にしたがって前下方に回って走る深い切れ込みによって、肺葉に区分されている。
右肺=1200ml 600g (三肺葉)
左肺=1000ml 500g (二肺葉)
心切痕・・・左肺の下部で、心臓部分がえぐれているところ。
両肺の中に肺胞が3億~5億ある。
1個の肺胞・・・直径0.1~0.2mm
肺胞の表面には
毛細血管が張り巡らされている(肺胞毛細血管網)
肺胞(と毛細血管)と、肺胞内の空気は1µm(マイクロメートル)以下で接している。
そして血液が肺胞部分を通過する1秒の間にガス交換が行われる。
呼吸を調節
呼吸は、炭酸ガスと酸素のガス交換なので、血中の炭酸ガス濃度が増えると、換気量や呼吸回数が増える。
呼吸は
①炭酸ガス分圧の増加と
②酸素分圧の低下と、
③血液の酸性度
によって影響を受ける。
肺が吸息により伸展されると、肺の伸展受容器が興奮し、迷走神経を介して呼吸中枢に伝えられ吸息中枢を抑制する反射が、肺迷走神経反射。
頸動脈小体と大動脈小体は、動脈血のCO2分圧が低下すると呼吸を抑制し、動脈血のO2分圧が低下すると呼吸を促進する。
呼吸運動の中枢
延髄の網様体には吸息中枢と呼息中枢がある。
橋の下半部には延髄の呼吸中枢に働きかけ、持続的に吸息を行わせる持続的吸息中枢が存在する。
橋の上半部にはこの持続的吸息中枢を抑制し、吸息と呼息の切り替えを調節する呼吸調節中枢がある。
肺呼吸
肺呼吸するのは
・ほ乳類・鳥類・爬虫類・両生類と、肺魚など。
肺に空気を出し入れするためには、肺を拡げたり縮めたりする必要がある。しかし肺が自分自身で拡大縮小するわけではない。胸郭(脊柱と12対の肋骨、胸骨で構成)と横隔膜(呼吸筋)の働きで、胸郭の容積を大きくしたり小さくしたりする。
胸郭を囲む骨組みの前後左右の動きによって、胸郭の容積を増減させるのが・・・胸式呼吸。
横隔膜を収縮したりゆるめたりして、胸郭の容積を上下方向へ増減させるのが・・・腹式呼吸。
呼吸に関わる筋肉(呼吸筋)は骨格筋、すなわち横紋筋です。
そのため、呼吸は自分の意志でコントロールできます。
また一般の横紋筋なら中枢神経の支配下にあるから、睡眠中など中枢神経が休んでいるときにはほとんど活動しない。ところが、呼吸は寝ていても休むことはない。
安静状態では1分間に、およそ酸素を250ml消費し、炭酸ガスを200ml排出する。しかも、酸素の体内貯蔵量は1000mlぐらい。だから、呼吸は休むことができない。
呼吸の型
頻呼吸・・・呼吸の頻度が24/分以上になったもの
徐呼吸・・・呼吸の頻度が12回/分以下になったもの。
過呼吸・・・呼吸頻度は変わらず、呼吸深度が深いもの。
浅呼吸・・・呼吸頻度は変わらず、呼吸深度が浅いもの。
多呼吸・・・呼吸の頻度・深度ともに増したもの。
少呼吸・・・呼吸の頻度・深度ともに低下したもの。
過換気・・・分時換気量が増加したもの。
減換気・・・分時換気量が減少したもの。
(肺換気量) 呼吸数 respiratory frequency・・・・・16~20回/min。
安静時男性成人は、1分間に約16回呼吸する。
1回の呼吸で出入りする空気の量を1回換気量といい、約500mlである。
したがって、1分間に呼吸する空気の量は、500ml×16=8000ml(=8㍑)である。
これが分時呼吸量または肺換気量で、運動時には、この量は200㍑くらいまで増加する。
女性は男性より約25%低い。
(死腔) 1回換気量のうち肺胞の中にまで到達せず(ガス交換しない)、気道を充たすだけの空間(鼻・口・咽頭・喉頭・気管・気管支・細気管支内)を死腔という。
その容量を死腔量といい、約150mlである。
(換気量)
- 毎分換気量=1回換気量×分時呼吸数
- 肺胞換気量=1回換気量-死腔量
- 毎分肺胞換気量=(1回換気量-死腔量)×分時呼吸数
皮膚呼吸
ミミズやヒル、腔腸動物は、皮膚から直接酸素を取り入れる皮膚呼吸をする。
ウナギ
- 特別な条件下では全呼吸の60%を皮膚呼吸でまかなう。
カエル
- 全呼吸の50%が皮膚呼吸
えら呼吸 魚類の多くがえら呼吸。
エラの表面に絶え間無く水を流し、エラの毛細血管に流れる血液との間でガス交換する。
ドジョウ・・・
☆エラ呼吸の補助として、腸腔内面でガス交換する腸呼吸もしている。ドジョウは口から飲み込んだ水を肛門から出す過程でガス交換をしている。
ナマコ・・・肛門から水を取り入れて腸呼吸している。
「呼吸が異常」
「過換気症候群」
「呼吸促迫症候群」
「呼吸困難」
「呼吸不全」
「呼吸法 」