- 今年度のノーベル生理学医学賞は、一酸化窒素(N0)の生理作用を解明した米国の3人の研究者に贈られることになった。
NOを含む窒素酸化物(NOx)は大気汚染物質として悪名高いが、どっこいNOは血管を広げて血圧を下げたり、外来の細菌を殺したりと意外な善玉であることが分かってきた。ただ、量が過ぎれば害がある。
狭心症和らげる
- 米国映画では、初老の男性が胸のあたりを押さえて苦しみだすシーンがしばしば出てくる。狭心症の発作だ。すぐにニトログリセンの錠剤を口に含ませると、発作は消失する。ニトログリセリンは狭心症の特効薬として知られている。
ニトログリセリンが作用を示すのは、体内で分解されてNOが出来るからだ。
- これが収縮した心臓の冠動脈を広げ、狭心症の症状を和らげるのである。
血管の内面には内皮細胞と呼ばれる薄い層状の細胞群がある。これがEDRF(血管内皮細胞由来拡張因子)という物質を放出し、血管を広げることが見つかったのは、1980年代のこと。今回の受賞者達の業績だ。87年には別の研究者によって、EDRFの正体がNOであることが確かめられた。つまり、体内ではもともとNOが作られており、それが「血管の筋肉をゆるめ、広げよ」という情報を伝達しているのである。
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