- 「テレビのアニメ番組「ポケットモンスター」放映中に気分が悪くなった子供が続出したのを契機に、周期的な光刺激が健康に与える影響に関心が高まっている。
ある周期で点滅する光を水槽の金魚に浴びせると、金魚が気を失ってひっくり返る。日本工業大学の鈴木務教授は生物のリズムと刺激の関係を調べているうちに、こんな不思議な現象を見つけた。さらに実験を続けていると、吐き気を催す学生が現れ、様子を観察していた鈴木教授も気分が悪くなった。
実験では1秒間に5回以下か、13回以上の割合で光を点滅させれば、金魚の泳ぐ様子に変化が見られなかった。しかし、点滅の周期が毎秒6〜12回だと、金魚は気を失い、学生らに現れた症状も重かった。文献を調べてみると、こうした現象は米国やカナダでもニワトリやサルで観察されていることが分かったという。
ポケモンの番組では赤と青の光が激しく入れ替わる場面で『引きつけ』を起こしたり、気分が悪くなるなどの症状を訴えた子供が多いことが分かっている。厚生省の研究班も4月初め、この症状発生が1秒間に10〜12回、つまり金魚がひっくり返ったのとほぼ同じ周期で点滅する赤い光が原因と結論づけている。
1秒間に10回程度の周期の刺激が体に良くないということは、実は脳神経科や人間工学の研究者にはかなり前から知られていた。この周期はリラックスしているときに脳波に現れる[α波]の周期[8〜14ヘルツ]に近く、刺激が脳波と同調して増幅されてしまうらしい。
例えば高速道路が出来た頃、トンネルが多い区間で、トラックやバスの運転手の間で『原因不明の頭痛』や『めまい』が広まったことがある。その後の調査で、1秒間に10回のペースで目に飛び込んでくる照明が原因らしいと分かった。
東京工芸大学の畑田豊彦教授は“昔は照明の間隔が2〜3mとかなり狭く、こんな現象が起きた”と言う。同教授によれば、これを考慮して今ではどこも照明の間隔を大きく空けて、照明が目に入る周期が毎秒10病程度にならないよいうに設計している。
新幹線や高速道路の高架から出る[低周波の騒音]や[振動]にも、似た現象が見られる。新幹線の沿線では毎秒10回前後の周期の騒音や振動が観測された場所に、健康被害を訴える人たちが多かったという。新幹線や自動車が高速で通過する時に、遮音壁や高架が共振して生じる低周波の振動が原因だと推定されている
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